パルサー誕生の現場を見ることの難しさ
天文学の本を読むとこんな長文のお話が書いてあります。
太陽よりもずっと重たい星は最後には「超新星」とよばれる大爆発をして、
その爆風のため「超新星残骸」というよばれる星雲のようなものを形成し、
中心には、「中性子星」とよばれる半径10キロメートルの小さな星ができて、
それは一秒間に何百回ものパルスを発し、「パルサー」と呼ばれる。
(図1参照)
でもこのお話は本当かしらと疑ったらどうでしょう。
確かに毎年何十個もの超新星が発見されます。
また、私たちの銀河系にはたくさんの超新星残骸があります。
パルサーもいっぱい見つかっています。
しかし、図1のようにこれらの天体が本当に繋がっているのかを実際に見た人はいません。
結局、本当にこのお話が正しいかどうか実証はされていないということになります。
唯一注目されるのが1987Aとよばれる1987年に爆発した星です。
この星については爆発前の写真も撮れいますし、
爆発後の経過がずっと科学的に研究され続けています。
1987Aの中心部にパルサーが発見できれば、
このお話の実証ということになり一件落着です。
しかし、
爆発から三十年以上観測を続けても、
まだ、パルサーが姿を表わなさいのです。
もしかしたら、
このお話のような場合もあるけど、
別の経緯を辿る超新星もあるのではないかと疑ってしまいます。
ところが、先日、
パルサーの存在がいよいよ見えてきたのではという論文が
パレルモ大学のGrecoさんらの研究チームによって発表されました
(図2参照)。
X線観測データをコンピュータシミュレーションを比較してこの結果を導きました。
ちょっとワクワクしますね。
それでもまだパルサーの直接観測ではありません、
あくまで状況証拠的なものです。
科学的に導かれたお話も、
それが99%正しいとわかっていても、それを100%にするには
大変な努力が必要だと感じます。
そして、1%でも異なった可能性を疑うことが大切です。
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図1 パルサーができるまでの筋書き
(今回はいろいろな出典なので映像の中にクレジットを埋め込んでいます。)
http://www.shibatashinpei.jp/lib/yamashin/660-fig1.jpg
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図2 1987Aの可視光とX線の映像
(今回はいろいろな出典なので映像の中にクレジットを埋め込んでいます。)
http://www.shibatashinpei.jp/lib/yamashin/660-fig2.jpg
本文終わり
パワポ
http://www.shibatashinpei.jp/lib/yamashin/660-fig.pptx
references
Greco et al. 2021