ヘラクレスとヒドラ
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ギリシャ神話の「ヘラクレスの12の冒険」の第一話と第二話でヘラクレスに退治された動物は
全て星座になって春の夜空に輝いでいます。
しし座、かに座、うみへび座(学名はヒドラ)です。
今晩の夜空でご覧ください(図1)。
物語の中ではヒドラは、頭が七つとも九つとも言われる化け物の蛇です。
日本で言うと八岐大蛇(やまたのおろち)のようなものです。
ヘラクレスがヒドラ退治に出かける時、狩の指導をしようと言うことで甥のイオラオスを連れて出かけます。
いよいよヒドラを退治にかかるのですが、
ヒドラの首を切り落としても、すぐにまた新しい首が生えてくるのででした。
新しい首は前より以上に力を持って襲いかかってきます。
これにはヘラクレスも困ってしまいます。
ところでこの話はギリシャ神話より遥か昔、今からおよそ五千年も前のメソポタミアからあるらしいのです。
出土した絵を参考に私が現代風に再現したのが図2です。
さて、ヘラクレスはどうしたでしょう。
ヘラクレスはイオラオスに命じて森に火をつけ、燃えている木を引き抜いで持って来させます。
そして、首を落とすとすぐに焼いて新しい首が生えて来ないようにしました。
いよいよ最後のクビになりましたがこれは死ぬことがない首で火を当てても燃えません。
最後の首は切り口に重い石を乗せて埋めることでやっとヒドラは退治されました。
以上が神話のお話ですが、
私には二つの疑問が残っています。
一つは、お話に出てくるヒドラと星座のヒドラの形が合わないことです。
もう一つは、神話自体に関するものです。
英雄の話としては、ヒドラに困っている村人がいて、それを英雄が退治して、
めでたしめでたしとなるのが普通のような気がするのですが、
ギリシャ神話では、なんの言われもなく化け物胎児のような難題が次々にヘラクレスに課せられ、
ただひたすらそれを解決し、しかし、解決したからといって特に報いられることはないというお話なのです。
ギリシャの人々は何を伝えたかったのでしょう。
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図1 5月12日午後8時頃の南西の空(Stellariumを利用)
http://www.shibatashinpei.jp/lib/yamashin/669-fig1.jpg
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図2 メソポタミアに伝わる7頭の怪物退治のイメージ(柴田画)
http://www.shibatashinpei.jp/lib/yamashin/669-fig2.jpg
本文終わり
パワポ
http://www.shibatashinpei.jp/lib/yamashin/669-fig.pptx
references will be note-669
Zotti, G., Hoffmann, S. M., Wolf, A., Chéreau, F., & Chéreau, G. (2021). The Simulated Sky: Stellarium for Cultural Astronomy Research. Journal of Skyscape Archaeology, 6(2), 221–258. https://doi.org/10.1558/jsa.17822