天地人の北斗七星

NHK大河ドラマの「天地人」が始まりました。番組の中でしばしば
北斗七星がみえる場面が出てくるのですが、それがあまりにも実際
の北斗七星とはかけはなれた、何だか豆電球で作った工作のようで、
見るたびに私はがっかりしてしまいます。

私の中では、北斗七星が高く昇って来ると「春だな」という気分に
なるという位置づけで、今の季節ですと夜の8時ころ東の空に昇って
きています。これが高くなると春なのです(図1参照)。

「ほ・く・と・し・ち・せ・い」と唱えながら七つを数えると分か
りやすいです。どの星も明るいのですが、上のように数えたとき
「し」にあたる星、つまり、7つの星のまんなかの星がやや暗くて
見にくいと思います。特に市街地ではそうです。実際に夜空で北斗
七星を御覧になったかたはお気付きと思います。ちょっと夜がふけ
ると今の季節でも見えますのでご確認ください。テレビではこの星
が際立って明るく見えるのです。ちょっと不愉快になりました。高
感度テレビカメラで撮っていただければ実際のきれいな北斗七星が
見せられるのですが、、、、。

なぜドラマに北斗七星が出てくるかをNHKのホームページの解説か
ら引用するとこうです。「北の空に輝く北極星を王とし、その回り
で輝く北斗の七星は、その王を守る武人にも例えられているのです。
一話では、その星の運命を信じ、わずか5歳の与六こと兼続が景勝
の家臣になるところがラストのシーンとなっています。」

これは中国の星座のなりたちから来ています。全ての星は天の北極
を中心に回るように見えるので、天の北極の近くにある北極星を天
帝に見たて、仕える者がその回りに侍るという設定で星座を作りま
す。北極星から離れるほど身分が下がっていくという想定です。そ
の意味で北斗七星たちは重臣という位置づけになるわけです。現在
は天の北極(回転運動の中心)のごく近くに北極星がありますが、戦
国時代だと天の北極と北極星はいまよりだいぶずれていて、さらに
中国の古い時代、たとえば、2000年くらい前だと驚くほどずれてし
まいます(図1参照)。これは地球の自転軸がコマの首ふり運動のよ
うに動くからです。大昔の人は、星たちが回る中心である天の北極
と北極星がずれていることが気にならなかったのかしらと心配にな
ります。


図1 1月中旬 午後8時ころの星空
(アストロアーツ・ステラーナビゲータを用いて作成)
http://astr-www.kj.yamagata-u.ac.jp/~shiata/yamashin/67-fig1.ppt
http://astr-www.kj.yamagata-u.ac.jp/~shiata/yamashin/67-fig1.jpg
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