板垣さんの新星とLi

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最近、京都産業大学神山天文台の新井彰さんと国立天文台のチームは
また新しい分析結果を発表しました。
「新星」に関するものです。
ここで、また、と書きましたのは、
以前2015年に「いるか座 V339」という新星に関する調査報告があり、
今回は「いて座V5669」という別の新星での調査が加わったということに関係しています。

新星というのは、星がないと思える場所が急に輝き出し、
新しく星ができたように見える現象です。
星全体が爆発する超新星というものもありますが、
今回はもう少し小規模なもので新星と呼ばれるものです。
新星は、
白色矮星とよばれる地球ほどの大きさの小さい星に、周りから物質が降り積り、
星の表面で核爆発するという現象です。

研究対象になった二つの新星は二つとも、山形市の板垣公一さんが発見したものです。
図1は「いるか座 V339」の発見当時の映像です。

さて、今回の調査の焦点はリチウムという元素に関わるものです。
ちょっと聞き慣れない元素かもしれませんが、
リチウムイオン電池は私たちの周りのあちこちにバッテリーとして使われています。
皆さんの携帯電話やノートパソコンにはきっとリチウムが使われています。
ですから、リチウムは非常に身近な元素と言えます。
さて、このリチウムはどこで作られたのでしょう。

宇宙誕生のビッグバンの時に、水素の百億分の1程度の分量、作られることがわかっています。
現在の太陽系ではその15倍ほど存在します。
ということは、宇宙誕生から現在までの約140億年の間に徐々に増えてきたことになります(図2)。
どこかでリチウムが作られたのです。
リチウムがつくらている重要な場所がどうも新星らしいというわけです。
「いるか座 V339」のときはたくさんのリチウムが見つかりやっぱりそうかとうことでしたが、
今回の「いて座V5669」ではほとんどリチウムができていませんでした。
どうなっているんでしょう。
もう少し頑張って新星を見つけ、
観測もしっかりやっていかなければならないと思われます。







図1 いるか座 V339の発見当時の映像(左:8月13日,右:8月14日) (提供:国立天文台、クレジット:板垣公一)」 http://www.shibatashinpei.jp/lib/yamashin/686-fig1.jpg
図2 リチウムの量の変化 http://www.shibatashinpei.jp/lib/yamashin/686-fig2.jpg
本文終わり
パワポ http://www.shibatashinpei.jp/lib/yamashin/686-fig.pptx references https://subarutelescope.org/jp/results/2015/02/18/936.html https://www.kyoto-su.ac.jp/news/20210707_859_nova.html