太陽系外の惑星の表面温度の測定 タイトル (No. 770)
date 2023 04 29 --------------------------- コロナ感染拡大のために、皮膚からの光(赤外線)で体温を測定する装置が普及しました。 どなたも経験があるのでないかとおもいます。 どんなものもその表面温度に応じた波長の光を出しているのでそれを利用します。 星の表面温度も同じ原理で測定します。 みずがめ座にあるTRAPIST-1 という星の周りには7つの惑星が回っていることが知られています。 この星は地球から40光年くらい離れていて比較的近くの恒星です。 この星の周りの惑星は、地球から見ていると、ちょうど星の前を横切るような公転をしているために、 惑星があることがわかりました。 7つの惑星のどれも地球と同じ岩石でできた惑星です。 木星や土星のようなガスの惑星ではなく、地球、火星、金星、水星に似ています。 図1のグラフは、横軸がそれぞれの惑星に届く中心星からの光の強さ、 縦軸が惑星の密度です。 いずれも地球を1としています。 どの惑星も密度が地球と同じくらいですね。 つまり、岩石でできた惑星です。 光の強さは、b の惑星が星に近くて強い光を受けていて、 d がちょうど地球と同じくらい、 h が地球よりも弱い光を受けています。 そこで、最初にお話しした体温を測るのと同じ原理で、 この星からの赤外線を使って惑星の表面温度を調べる研究が行われました。 図2のように星の後ろ側を惑星が通過するときの赤外線の変化を調べます。 惑星が星の裏側にあるときは星のみの赤外線ですが、 そうでないときは惑星からの赤外線が加わります。 加わった分の光を調べると惑星の体温、つまり、表面温度がわかるという作戦です。 ジェームス・ウェッブ望遠鏡を用いてこの観測に成功しました。 惑星bは星に一番近いので表面は230度でした(2023年3月29日発表)。 惑星 d は地球に近いので温度が知りたいところですが、 より暗いので、まだ測定には成功していません。 今後の結果が楽しみですね。
図1 TRAPIST-1 の周りの7つの惑星 (提供:NASA/JPL-Caltech) http://www.shibatashinpei.jp/lib/yamashin/770-fig1.jpg
図2 TRAPIST-1 の惑星bによる惑星食の様子 (提供: 観測 Thomas Greene (NASA Ames), Taylor Bell (BAERI), Elsa Ducrot (CEA), Pierre-Olivier Lagage (CEA)、 イラスト、NASA, ESA, CSA, J. Olmsted (STScI)) http://www.shibatashinpei.jp/lib/yamashin/770-fig2.jpg
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パワポ http://www.shibatashinpei.jp/lib/yamashin/770-fig.pptx references 770-ref.pdf https://www.nasa.gov/feature/goddard/2023/nasa-s-webb-measures-the-temperature-of-a-rocky-exoplanet