宇宙誕生の初期の銀河に有機物の兆候  (No. 778)

date 2023 06 24
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「わっか」(リング)にみえる天体はいっぱいあります。
図1の画像を見てもどんな天体かは専門家でも簡単には分からないでしょう。
これはジェームス・ウェッブ宇宙望遠鏡によるSPT0418-47という名前の銀河の映像です。
ここで二つのびっくりすることを説明しなければなりません。

図2で説明します。
びっくりすることのひとつはSPT0418-47という銀河(オレンジ色の雲のように描かれているもの)と
もう一つの銀河G(青色の雲のように描かれているもの)が地球とほとんど一直線に並んでいるということです。
これは全くの偶然です。

そうするとSPT0418-47からの光が図のオレンジ色の曲線のように重力によって曲げられます。
すると、オレンジ色の銀河は地球から見るとリングに見えます。
これが図1のリングなのです。
これはアインシュタインの相対性理論で予測されたことで、アインシュタインリングと呼ばれています。

図2の青い色の銀河のあたりに凸レンズがあるのと似ています。
そのため、オレンジ色の銀河の光が強められて地球から観測されます。
オレンジ色の銀河までの距離は約150億光年もあって、普通は光が弱くて観測が難しいのですが、
この重力レンズのおかげでジェームス・ウェッブ宇宙望遠鏡で捉えることができたのです。

2番目の驚きは、リングになったSPT0418-47の光を分析したところ有機物の存在が示されたというのです。
テキサス A&M 大学の天文学者ジャスティン・スピルカーとその共同研究者が、6月5日発行の科学雑誌ネイチャーに発表したの
ですが、宇宙が誕生してからわずか15億年未満の早い時期にすでに有機物が形成されたのではないかと言っています。

宇宙が誕生してから約138億年が経過しているということを考えると、
宇宙誕生後の早い時期にすでに生命の起源になる物質があったことになります。
夢みがちな私は人類のような知的生命もその後誕生して、あちらこちらに宇宙人がいるのかな、などと想像してしまいます。
本当のことはまだ分かりません。
もっと宇宙のことを知りたくなります。


図1 ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡による銀河SPT0418-47の映像(提供:J. Spilker/S. Doyle, NASA, ESA, CSA) http://www.shibatashinpei.jp/lib/yamashin/778-fig1.jpg
図2 重力レンズの仕組み http://www.shibatashinpei.jp/lib/yamashin/778-fig2.jpg
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パワポ http://www.shibatashinpei.jp/lib/yamashin/778-fig.pptx references https://today.tamu.edu/2023/06/05/webb-telescope-detects-universes-most-distant-organic-molecules/