200年前の私たちの銀河のブラックホールでフレア (No. 787)

date 2023 08 26
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私たちが住む天の川銀河の中心にも巨大ブラックホールがあります。
その映像が公開されたニュースを覚えている方も多いのではないでしょうか。
しかしこの私たちの銀河のブラックホールはおとなしいブラックホールです。
他の銀河のブラックホールでは激しい爆発(フレアー)があったり、
ジェットを吹き出したりと活発な場合も結構あるからです。

しかし、昔は一時期、私たちのブラックホールも激しい爆発をしていたようなのです。
このことは日本の研究者が以前から指摘していたことでしたが、
新たな証拠がこのほど発表されました。

フランスのストラスブール大学のフレデリック・マリンさんの率いる観測チームは、
IXPEというX線望遠鏡を用いてブラックホール周辺を調査しました。
そして、約200年前にブラックホールがブレアした時の光が分子雲で反射した、
「こだま」を見つけました。
図1のようにブラックホールから出たあと、
分子雲で反射した光は遠回りしている分だけ遅れて地球に到達します。
なのでより昔の光を捉えることができるのです。

IXPEはこのコーナで以前紹介したように、偏光を測定できる望遠鏡です。
観測結果は、
図のようにブラックホールに対して直角方向に偏光していることを
示しています。
これは、
分子雲で反射した光がブラックホールの方向から来たものである強い証拠となります。

私たちの銀河のブラックホールは今はあまりたくさんのものを吸い込んでいません。
およそ200年ほど昔に大量の物質を吸い込んで、
その時に強いX線を出したのでしょう。
200年前だったらつい最近のことですね。
また、近いうちに巨大なものを吸い込むかもしれないと思うとドキドキします。



図1 光のこだまの仕組み http://www.shibatashinpei.jp/lib/yamashin/787-fig1.jpg
図2 IXPEによる反射光の偏光方向の結果(出典:https://arxiv.org/abs/2304.06967) http://www.shibatashinpei.jp/lib/yamashin/787-fig2.jpg
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