見えないものを見る (No. 792)
date 2023 09 30 --------------------------- 見えないものを見えるようにして自然の仕組みを解明していくのが科学の役割です。 図1は私の大好きな星雲の一つで「ほ座パルサー星雲」と呼ばれています。 青くぼんやりとして不思議な形をした雲のようなものです。 星雲の周りにたくさんの星が見えています。 実はこの画像はふたつの画像の合成です。 ひとつは、このコーナーでよく登場するハッブル宇宙望遠鏡の画像です。 これは私たちの目と同じ可視光線による画像です。 もう一つは、チャンドラX線線望遠鏡とIXPE望遠鏡によるもので、 X線で撮影したものです。 X線は目に見えません。 病院でX線(レントゲン)撮影する時、X線が放射されて、 体を突き抜け、後ろのフィルム(現在では半導体素子)に写しとっているのですが、 撮影の瞬間、X線でピカっと光るのを目で見える人はいないと思います。 X線は目に見えないのです。 可視光の画像に赤い色を人為的につけ、 X線の画像に青紫の色をつけて、二つを重ねたのが図1です。 合成に使った可視光の画像が図2です。 驚くことに星雲は全く写っていません。 目で見ても星があるだけで何もない空間が広がっているようにしか見えないのです。 まさかここに星雲があるとはとても思えないですね。 図3はX線画像で星雲が見えています。 しかし、星は全く見えていません。 二つの画像があって初めて星空の中にある星雲の姿を見ることができたのです。 一つの方法で見ていては宇宙の真の姿を突き止めることができないことがわかります。 電波、赤外線、可視光、紫外線、X線、ガンマ線、ニュートリノ、重力波など あらゆる放射を使って宇宙が探査されています。 科学者はかなり手の込んだ手法で自然を調べます。 その結果を自分自身の手で直接確かめようと思ってもできるものではないので、 科学者の報告を聞いて、できたら、質問して、 真偽のほどを判断し理解することになります。 疑問に答えるのは私の記事の仕事でもありますので、どうぞ質問などありましたら このコーナーにお寄せください。
図1 ほ座パルサー星雲(合成画像)(提供:NASA) http://www.shibatashinpei.jp/lib/yamashin/792-fig1.jpg
図2 (可視光画像) http://www.shibatashinpei.jp/lib/yamashin/792-fig2.jpg
図3 (X線画像) http://www.shibatashinpei.jp/lib/yamashin/792-fig3.jpg
本文終わり (homeへ)
パワポ http://www.shibatashinpei.jp/lib/yamashin/792-fig.pptx references will be note-792