星は遠い (No. 829)

date 2023 06 29
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星は遠い、宇宙は広いということを嫌というほど思い知らされたのは、
星までの距離を測ることに挑戦した天文学者だったと思います。

月までの距離をはかることは古代ギリシアでもできていました。
図1(左)のようにAとBの二地点からみる月の位置は遠くにある星を背景にして異なることから距離がわかります。
これを視差とよびます。
月と同じ原理で、地球が太陽の周りを一周する間に星の見える方向が変化するはずです(図2右)。
この年周視差と呼ばれる現象が測定できれば星までの距離を知ることができます。

しかし、「言うは易く行うは難し」です。
観測は困難を極めました。

図2を見るように角度は1度を60等分したものを1分とし、
それをさらに60等分したものを秒とします。
秒単位の角度の測定をしなければならないのでした。

年周視差は、一年を周期とした星の動きとして観測されます。
精密な観測をして初めて見つかったのは光行差という別の現象でした。
1725-26年年のことです。
地球は太陽の周りを毎秒30kmほどで回っています。
すると図3のように上から光が来ても、地球が動いているために光の到来方向が傾きます。
この向きの違いはわずか約20秒でした。
光行差も一年周期なので非常に紛らわしいです。
年周視差は光行差よりも小さかったので、
光行差を差し引いた僅かな残りの角度を測定しなければなりません。
結局、年周視差がみつかったのは1837-40年にかけてのことでした。
最初に発見された年周視差は1秒から0.1秒程度のものでした。
光年になおすと数光年から十数光年の距離です。
現在の技術ではミリ秒以下の角度が測定できます。

(メモ:図は3枚ですがイラストなので縮小しても大丈夫と思います。)

図1 視差によって距離がわかる http://www.shibatashinpei.jp/lib/yamashin/829-fig1.jpg
図2 小さい角度の単位 http://www.shibatashinpei.jp/lib/yamashin/829-fig2.jpg
図3 光行差 http://www.shibatashinpei.jp/lib/yamashin/829-fig3.jpg
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