キューブサット (No. 830)

date 2023 07 06 
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人工衛星として打ち上げられる宇宙望遠鏡が活躍しています。
それらはとても大きなロケットで打ち上げられます。打ち上げの様子はときどきテレビなどで放映されますね。
一方で、キューブサットともよばれる10センチメートルほどの超小型衛星が最近注目されています。

私が若い頃利用していた「あすか」とよばれるX線望遠鏡は420キログラムもあり、
最近活躍のジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡は6.5トンもあります。
こういった宇宙望遠鏡は弱い光を受け取る力はすごいのですが、費用が膨大ですし、
設計から実際に使えるまでに十年といった長い期間がかかります。
新しい技術が出現したりしてもすぐに取り入れるのが難しくなります。
規模が多いだけに運営組織をしっかりするのも大変です。
その間、若い研究者を育てるには適しません。
短い期間に最新の技術を使って、今知りたいことが研究できる超小型衛星を少人数で開発するメリットは十分あることになります。

私の研究に近いところでは、
理化学研究所の玉川徹さん、榎戸輝揚さんらのチームが2023年11月に打ち上げたNinjaSat(ニンジャサット)があります(図1)。
10センチメートルのサイコロサイズを1ユニットとして6ユニット(10cm×20cm×30cm)の衛星でです。
ブラックホールなどから放射される変動するX線を長時間観測して、
ブラックホーに吸い込まれていく仕組みを解明することが可能です。
大きな望遠鏡は一つの観測に独占的に時間を使うことは許されませんが、超小型衛星なら長時間観測が可能です。

また、最近はロケットを打ち上げてくれる民間の会社が出現しました。
このこともこの流れに沿っています。
複数の小型衛星を相乗りで安く打ち上げてもらえるので費用も少なくて済みます。
ニンジャサットでは二段ロケットのFalcom 9が使われましたが、
これは一段目ロケットが捨てられず、基地に戻ってきます。
このためコストがすくなくなります(図2)。
Falcom 9 は最近では週に1-2回のペースで打ち上げられているそうです。







図1 ニンジャサット(提供:理化学研究所) http://www.shibatashinpei.jp/lib/yamashin/830-fig1.jpg
図2 Falcom 9 (提供:スペースX社) http://www.shibatashinpei.jp/lib/yamashin/830-fig2.jpg
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