潮汐破壊 (No. 847)

date 2023 11 02 
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ブラックホールに吸い込まれたらどうなりますかという質問を受けることがあります。
なんでも吸い込んでしまうブラックホールですが現実には吸い込まれる前に大変なことが起こります。
潮汐破壊(ちょうせきはかい)です。

図1のように、
ある大きさをもった物体がブラックホールに近づくな軌道に入ったとき、
物体に働く力が部分によって異なるため、結果的に物体を引きちぎる力が現れます。
これが潮汐力です。
そのため物体はバラバラに破壊されながら吸い込まれ、
一部は吸い込まれないで吹き飛ぶような軌道になる場合もあります。

最近、銀河中心のブラックホールに近づいた星が潮汐破壊され明るく輝く現象が多数見つかっています。
図2は最近チャンドラX線望遠鏡のホームページに公開された想像図と、
左上の枠内は中心が光っている銀河です。

図2をみるとなんだかブラックホールに特有の現象のように思ってしまいますがそうではありません。
潮汐というのは潮の満ち引きですね。
これは地球上の海で見られる現象です。
月と地球は引力で引き合いながら運動していますので、地球にも潮汐力が働いています。
ブラックホールほど大きな力でないのでこれで地球が壊れることはありませんが、
海の水は液体ですから、
わずかな力でも潮汐力を受けて動きます。
その結果として潮の満ち引きが起こっているのです。

潮汐力はいろいろなところでおこります。
1994年にシューメーカー・レヴィ―第9彗星の軌道が木星の引力圏に入り木星に落下しました。
この場合も彗星がそのまま木星に突入したのではなく、その前に、
潮汐力で引きちぎらればバラバラになってしまいました(図3)。

軌道や引力を及ぼしあう物体の質量比によって潮汐力はかわりますが、
それが大きい時には潮汐破壊が起こります。
宇宙では要注意の現象ですね。
人の心もなにかに強い引力を感じた時に潮汐力が働くような気がします。



[画像はいずれも適宜トリミングしてください。]


図1 潮汐破壊の様子 http://www.shibatashinpei.jp/lib/yamashin/847-fig1.jpg
図2 ブラックホールによる星の潮汐破壊の想像図およびX線の放射(左上) (提供:X-ray: NASA/CXC/Queen's Univ. Belfast/M. Nicholl et al.; Optical/IR: PanSTARRS, NSF/Legacy Survey/SDSS; Illustration: Soheb Mandhai / The Astro Phoenix; Image Processing: NASA/CXC/SAO/N. Wolk) http://www.shibatashinpei.jp/lib/yamashin/847-fig2.jpg 短縮する時は (提供:NASA https://chandra.harvard.edu/photo/2024/tde/) でもいいかもしれません。
図3 木星に近づくシューメーカー・レヴィ―第9彗星 (提供NASA, ESA, H. Weaver and E. Smith STScI and J. Trauger and R. Evans NASA Jet Propulsion Laboratory) [これは不要:画像番号 PIA17007] http://www.shibatashinpei.jp/lib/yamashin/847-fig3.jpg
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