かんむり座のお話(日本版)

6月末、夜の9時ごろ頭上に冠の形をした美しい星のならびがあります(図1)。
やや暗い星たちですので街あかりの無いところで見てください。でも、そ
の美しさゆえ、説明しなくてもすぐにそれとわかりますし、一度見たら決
して忘れることのできない姿です。

「かんむり座」というのが正式名ですが、埼玉県の秩父地方では、これを
「くびかざり星」とよんでいました。そこにはこんな話が伝わってい
るそうです(埼玉県秩父の吉田風土記)。

平安時代前期、この地方に小さな独立国家を企てた平将門(たいらのまさ
かど)という人がいます。最後は、吉田町にある城峯山というところで、
藤原秀郷(ふじわらひでさと)との合戦に敗れ、将門の野望は失敗に終わ
ります。この戦いの最後、将門たちは、再起すべく、城峯山の洞窟に身を
潜めることになりました。

ところが そのことを将門が寵愛していた桔梗姫が、秘かに秀郷に報せて
しまったのです。桔梗姫が秀郷と内通していたことを知った将門は姫をそ
の場で斬り捨ててしまいました。それを憐れんだ秀郷は、姫がつけていた
首飾りを手にとり、空中たかく投げあげたところ、天上に舞い上がって星
空にかかり、「くびかざり星」なって輝きだしたといいます。

星にまつわる日本の説話で星が出てくるのは少ないので、貴重なお話です。
もちろん、七夕のおはなしがもっとも知られたものでしょうけれど。ゆか
た姿で七夕かざりに願いごとを書いて笹竹に。そんなイベントが7月4日
(土曜日)やまがた天文台(山形市小白川キャンパス)であります。



図1 かんむり座
(撮影:熊谷幸三さん)
http://astr-www.kj.yamagata-u.ac.jp/~shibata/yamashin/89-fig1.jpg
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図2 (絵:福島 茂良)
http://astr-www.kj.yamagata-u.ac.jp/~shibata/yamashin/89-fig2.jpg
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作者の強いリクエストでレイアウトに関してこの図のようにおねがいします。
http://astr-www.kj.yamagata-u.ac.jp/~shibata/yamashin/89-fig3.jpg
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