ブラックホールからの光

星の名前が車の名前に使われることがあって、星空が親
しみやすいことがわかります。セリカ(天空)、
カペラ(ぎょしゃ座の星名)、カリーナ(りゅうこつ座)、
コスモ(宇宙)、コロナ(太陽の周りの光輪)、ジェミニ
(ふたご座)、パルサー(パルスを出す中性子星)、すばる
(おうし座にある星団)などです。

でも、ブラックホールという名前の車はまだ発売されて
いません。なんでも吸い込むモンスターの印象が車には
ちょっと似合わないからでしょうか。ブラックホールは
強い重力で光をも吸い込む、なんでも吸い込むモンスタ
ーとして良く知られています。

たくさんのブラックホールが宇宙にはあって、実際に観
測されていますが、ブラックホールは光をも吸い込むの
でそれが光を出しているはずもなく、「どうしてブラック
ホールが観測されているのですか?」という質問が良く出
ます。今日は、ブラックホールがどういうふうに見えてい
るかを説明したいとおもいます。

そんなに難しいことではありません。ブラックホールは
何でも吸い込むので回りにあるガスをどんどん吸い込ん
でいきます。回りにガスがいっぱいあるとものすごい勢
いで吸い込むので、狭い吸い込み口(ブラックホール本体)
にガスがどっと押し寄せて来て激しくぶつかりあうのです。
ガスはぶつかりあってブラックホール圏内に突入する直前
にはすごい高温になっています。その高温ガスからの光を
私たちは見ることができるのです(図1)。

ブラックホールに吸い込まれるガスはまっすくブラックホ
ールに突っ込むのでなくて、ちょうどお風呂の水がうずを
まきながら落ちて行くのと似て、うずまきを作って吸い込
まれていきます。そのときは回転による遠心力が働くので、
ブラックホールの回りに円盤ができます。

この円盤状のガスが結局はブラックホールに吸い込まれま
す。ところが、全てがブラックホールに吸い込まれるので
はありません。一部のガスは、絞ったホースの先からでる
水のように勢い良く円盤に垂直な方向に出ていきます(図2)。
これを双極ジェットなどと呼んでいます。

ブラックホール円盤や双極ジェットについてはまだ分から
ないことがたくさんあります。吸い込まれるガスの光のす
き間に、ブラックホール圏の黒い膜を実際に見ようとする
巨大望遠鏡の計画も進んでいます。まだ勉強中の子供たち
の将来の挑戦を期待していますよ。


図1 はくちょう座にあるブラックホールからの光(X線望遠鏡ローサットによる)。
右下の蒼白い光です。
(提供:マックスプランク研究所)
http://astr-www.kj.yamagata-u.ac.jp/~shibata/yamashin/95-fig1.jpg
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図2 ブラックホールからの双極ジェット
左は遠くからみた様子でややふらついているジェットが見えていますが、
右は中心部で、そこでは強くしっかりしたジェットがでているのが見えます。
(提供 米国立電波天文台/AUI/NSF)

http://astr-www.kj.yamagata-u.ac.jp/~shibata/yamashin/95-fig2.jpg
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