宇宙の組成(1) 宇宙の誕生は約137億年前です。このとき元素は水素とヘリウム だけでした。このシリーズNo.99で水素とヘリウムが12対1の割合で できることを紹介しました(図1)。 水素原子は「あおばた豆」であらわして「水素くん」と呼びましょう。 ヘリウムさんは複合粒子です。水素君ふたつとコヒー豆で表した中性子 くんふたつが集まったものです。全体で四粒あります(図2)。これを結 びつける力について研究したのは日本人で始めてノーベル賞を受賞した 湯川秀樹博士です。図では赤いリボンで結んでいますが、じっさいにこ のようなリボンがあるわけではありません。でもこの四つの粒を結びつ ける力は実際に存在するものです。 このあと宇宙はすごい早さで膨脹を続けましたので、原子たちはばらば らで宇宙空間に浮遊していました。このままでは、例えば炭素や酸素と いった原子もなく地球や生命が誕生することはありませんでした。中学 校のころならった元素の周期表は水素、ヘリウム、リチウム、ベリリウ ム、硼素、、とたくさんの元素がならんで暗記に苦労させられましたが、 宇宙初期では水素、ヘリウムでおしまいですから非常に簡単です。 しかし、物質のすこしだけ濃いところに万有引力(重力)の効果で少しず つものが引き合って集まりだします。一旦、あつまるとますます引力が強 くなりさらに物質を集めます。そうして、どんどん集まったところは密度 が高くなり、やがて星が出来ます。この星は水素とヘリウムからできてい ます。星の中心付近では、水素くん4つが合体してヘリウムさんが作られま す。このときものすごいエネルギーが出るので星が輝くことが出来ます。 水素の核融合反応とよばれる現象です。お気付きかもしれませんが、このと き、ふたつの「あおばた豆」が「コヒー豆」に変身しています。 星の中心ではどんどん「ヘリウムさん」で一杯になってきます。 すると「ヘリウムさん」3つが合体する反応がおきて、なんと「炭素」が 出来ます(図2)。さらに反応が進むと「酸素」も作られます。もう、想 像できますね、このようにして星の中で水素とヘリウム以外の元素がつ くられてゆくのです。 星はやがて膨脹して星の中心部分が蒸発するように宇宙にひろがる現象が おこります。そのとき、星の中心にある「炭素」からの光がでることが予 想されます。図3は日本が人工衛星として打ち上げた「すざく」というX線 望遠鏡がたしかに炭素からの光をとらえることに成功しました。 註)宇宙誕生のころの元素は水素とヘリウムですが、ごくごく微量のリチウム が存在しました。 図1宇宙がうまれたころの原子たち http://astr-www.kj.yamagata-u.ac.jp/~shibata/yamashin/x01-fig1.jpg 画像をクリック(拡大) 図2 星の中では水素からヘリウムへ、ヘリウムから炭素へ合成が進む http://astr-www.kj.yamagata-u.ac.jp/~shibata/yamashin/x01-fig2.ppt http://astr-www.kj.yamagata-u.ac.jp/~shibata/yamashin/x01-fig2.jpg 画像をクリック(拡大) 図4 村島未生(東大理学部)ほかJAXA「すざくチーム」提供 (http://www.astro.isas.jaxa.jp/xjapan/news/article/2006/0326/ 参照) http://astr-www.kj.yamagata-u.ac.jp/~shibata/yamashin/x01-fig2.png 画像をクリック(拡大)