3回目のワクチン接種の遅延の問題

3回目ワクチン接種の遅れ

いま、真っ只中のコロナ感染第6波の到来は予め予想もされていたし、 その前の第5波の収束にワクチン接種が非常に効果的であるったことも知っていた。 「(接種可能な人には) 3回目のワクチン接種を速やかに実施すること」 が第6波を小さく抑えるための基本的対策の一つである事は明確だった。 専門家のシミュレーションでもこのことは示されていたと思う。 実際、 私が個人で行っているシミュレーションでも抗体の保有率が60-70パーセントを 超ええると顕著に感染がなくなる結果を得ていることからもそれはわかる。 [註1]

では、実際はどうであったか。 一応高齢者の一人である私自身は3回目ワクチン接種を2022年3月21日に済ませたが、 これほど遅くなるとは思ってもみなかった。 医療従事者は2021年末に、高齢者は2022年2月中に完了して欲しかった。 3月25日集計の山形県の3回目摂取率は41%しかない。 つまり、報道などの情報で言われていた接種開始時期に比べ 自治体から来る接種情報がひと月以上遅れた。さらに、 申し込んでも一月近く待たされた。 多くの市民が「まだ接種券来ないね」、と顔を見合わせる期間が一月以上続いた。 私が受けたワクチンの接種証明の製造番号を見ると、 有効期限が2022年2月28日となっていて、 有効期限切れのワクチンを打たれてことになる。 実は、2月18日に、厚生労働省から有効期限を9ヶ月に延長するという通知が出され、 私の打ったワクチンは製品に表示されたものではなく、5月31日まで延長されている。 いずれにせよ、ワクチン接種が早い方が良いとわかっていながらワクチン接種の 段取りが遅れ、結果、接種が遅れていることは肌で感じる。

ワクチン接種は重要か、重要でないか?

私は3回目ワクチン接種にこだわりすぎているのか? 実は、それほど重要でないのか?(他の対策の方が重要なのか)? 3回目ワクチンの重要性の検証として、 3月の新規感染発生率と3回目ワクチンの接種率を都道府県別に 調べて相関があるかどうかを調べることにした。以下の図が結果である。


都道府県別の3月の新規感染数(人口1千人あたり)と3回目ワクチン接種率の相関。 一つの+が一つの都道府県。(詳しいデータの取り扱いは文末)

点は右下がりに並んでいる。(状況が異なる東京を除いてみるとよりはっきりす。) ワクチン接種率が高いほど、人口1千人あたりの新規感染者数が少ないことを 示している。 県によってそれぞれの事情がありばらつきはある。しかし、 大きな傾向は見ることができる。 「ワクチン接種率が高いほど、新規感染者数が少ない」、 「ワクチン接種率は重要な感染抑制要素である」といって良さそうだ。

人類が考えるべきこと

このレポートでのデータ解析から得られる教訓は何か。

2020年の早い段階でドイツのメルケル首相は、外出制限だのマスクなどは ワクチン開発・接種の実施のための時間稼ぎに過ぎないと明言している。 私は、彼女の解析力は優れていると思う。 そして、現在、ワクチン開発ができ(これは科学の成果)、 ワクチンを利用できる段階になったのである。 ワクチンが打てる条件の方には、ぜひワクチン接種を受けていただきたい。

今回、第6波を小さく抑える方法がワクチン接種であることを知っていた にも関わらず、時間的ゆとりもあったにも関わらず、それができなかった。 これは、科学的知見のもとにデータを解析し因果関係を把握した上で、 政策を決定・実行する力が弱いことを意味している。 特に指導的立場にある人にこの力が欠けている。 結果的に、ワクチン接種の時期の遅れ、接種能力の不足に陥った。 ワクチンの重要性の認識(自分が罹るかどうかでははく 蔓延の抑制に貢献するという意識)が市民の間でも少なかった。 これらの弱点はなんとか改善したい。なぜなら、 今後の新しいパンデミック(例、トリインフルエンザ)、 地球環境問題解決、世界平和のために はぜひとも科学的解析力と因果関係を把握する高い能力が欲しいからである。

以上が今回得た教訓だが、最後に割合とはっきりしたCOVID-19に関する知見を まとめておきたい。 未来のために。
・ 当面、ワクチン接種が唯一のパンデミックの抑制手段である。
・ しかし、抗体の保持期間が数ヶ月と短く、追加接種が常に必要である。
・ 感染しても軽症に抑えられる治療法が確立することが必要になっている。
  しかし、まだそれができていない。
・ ウイルスの変異は小さいものは毎週のペースで起きている。
  今後、さらに感染力の強い株や重症化しやすい株が発生する可能性は常にある。
・感染が多ければそれに比例して変異の頻度も増えるので、全世界として
  パンデミックの鎮静が計られないと収束はない。
  変異株の新たな発生の危険は消えない。[註2]
(2022.3.29)

データについて

1.  COVID-19感染者数については厚生労働省の国内の発生状況
https://www.mhlw.go.jp/stf/covid-19/kokunainohasseijoukyou.html
からエクセルで都道府県別に集計された毎日のデータが公開されている。
このデータから3/1から3/19までの新規感染者すうの合計を都道府県別
に算出した。
2. 都道府県別の人口は、総務省統計局
https://www.stat.go.jp/data/nihon/02.htm
で公開されている。
3. 1の値を2で割って、人口1000人あたりの3月1日から3月19日までの
新規感染者数を都道府県別に計算することができる。
この値を縦軸にしている。

4. ワクチン接種率は NHKでまとめたものが
https://www3.nhk.or.jp/news/special/coronavirus/vaccine/progress/
に公開されている。これより3回目接種の都道府県別割合を得た。
3/21までの集計が公開されていたのでこれを用いた。
この値が横軸になる。
[註1] これは、2020年に行ったシミュレーションなので、 オミクロン株は感染率が高いので、70-80%必要なのかもしれない。
[註2] 外国での変異ウイルスの国内侵入をいかに防ぐかが時々議論されるが、 私の感染シミュレーションの実験では、国内での感性が抑えられるようになっていれば 外から入ってきても感染は拡大しない。防疫は多少の時間稼ぎになるがそれで 感染が抑えられるわけではない。重要なのは国内で感染が拡大しないように なっていることである。

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